18:10 陽が傾き掛けた夕暮れ時、その瞬間を目撃しようと集まった大観衆に異様な空気が流れる。
「NEXT ARTIST abingdon boys school!!」とアナウンスされた瞬間、期待を込めた大歓声が一気に響き渡る。
その期待感を焦らすように緞帳がゆっくり上がると、ステージ中央にはa.b.s.のライブでお馴染みのシンボル、レンジローバーの車体前部が3台顔を並べている。あの頃のままだ。
2012年11月のファンクラブ会員限定ライブ以降、表立った活動が無かったabingdon boys schoolが、約6年ぶりに復活。
イナズマの出演は同じく2012年以来、三度目となる。
オープニングSEは、「nocturn」でも「ReBirth + ReVerse」でもなく、「DESIRE」!
a.b.s.のダークサイドともいえる楽曲の一節を切り取り、この日のために岸利至(シンセサイザー・プログラマー)がアレンジ。
超前向きに捉えると、a.b.s.の最新音源だ。
SEから徐々に生演奏へと展開し、SUNAOのギターが鳴り響く。
a.b.s.ならではのオープニングに会場はヒートアップ!オープニングから表情豊かなサウンドを響かせた。
絶大なる声援を噛みしめ、会場を埋め尽くしたファンと久々の再会を味わうかのように、「久しぶりー!行こうかー!」と西川貴教が一言。
その言葉に乗っかるように演奏されたのは「STRENGTH.」!
SUNAOの低音バッキングと柴崎のタッピングが冴えわたる重厚なイントロ。
岸利至の分厚いシンセとサポートのIKUO(B)、長谷川浩二(Dr)のパワフルなリズムに、西川の歌声が突き抜ける。
場内は、約6年分の鬱屈を晴らすかのように熱を帯び、イントロを耳にした途端、胸の奥に溜め込んできたものが一気に崩れ去った。
“お久しぶりです!abingdon boys schoolです!与えられた時間はわずか!全部食らい尽くせ!かかってこーい!”
西川の雄叫びに続いて演奏されたのは「HOWLING」!
ヘヴィなリフで埋め尽くされたa.b.s.らしいナンバーは、今さら言うまでもない個々の力量の確実さを改めて感じさせ、オーディエンスも力強く拳を突き上げる。
西川はステージを縦横無尽に動き回り、あの頃と何も変わらない気持ちをメンバーと分かち合ってる様子。
2006年「バンドやろうぜ」をコンセプトに、「音楽を始めた頃の気持ちに戻れたら」という想いを胸に結成されたが、そんな原点であるピュアな想いを、約6年ぶりとなる今夜のステージで爆発させているようにも見える。
”改めましてabingdon boys schoolです。6年ぶりにイナズマに帰って来たぞー!
もし帰ってくるなら、この場所しかねぇと思っていたんだよ!”
西川の熱い言葉と共に、a.b.s.のアッパーチューン「JAP」へ雪崩れ込むと、会場の熱はグングン上昇。まったく息つく暇もない。
さらにここで、a.b.s.の復活を祝うべくあの男が急遽登場!
西川貴教の盟友で、かつてa.b.s.とコラボしたミクロマンサンライズ!!!の、イナズマへの想いを綴った華麗なラップと共に「LOST REASON」へ。
a.b.s.との共演をきっかけに親交を深めた二人の絆は、記念すべきイナズマ10回目のステージでさらに深くなり、復活に花を添える凄まじく記憶に残るステージを展開してくれた。
”紹介します、7人目のメンバー、ミクロ!!!”
”ぼく、誰よりもabingdon boys schoolが好きで、何よりも誰よりも大好きで、後輩としてイナズマ皆勤賞です!!”(by ミクロマンサンライズ!!!)
念願のa.b.s.との共演に喜びを爆発させたミクロマンサンライズ!!!。
a.b.s.復活の嬉しい気持ちと、イナズマへの10年分の想いは想像を遥かに超える大きいもの。
その姿は、またa.b.s.と一緒に音楽を届けたいという純粋な気持ちが表れていた。
”久しぶりにアルバムを聴いたり、昔の音源聴いたりとか、メチャメチャしました。
みんなでこの6人でスタジオ入って、詳しい近況とか話すわけじゃなく、音出したらコレだったっす!サイコー!”(西川)
”それなのにSUNAOさんは、うちのバンドスコアを見て練習してました。
自分の演奏をスコアで確認するってどういうこと(笑)?”(西川)
”いや…あれ自分で監修したやつだからさ…”(SUNAO)
“そういう問題じゃねぇ!”(西川)
西川のSUNAO弄りもa.b.s.のライブに欠かせないもの。二人の愛溢れるやりとりに会場もほっこりする。
”このイナズマを10年続けさせてもらって本当にありがとうございます。
開催期間が少し遅くなったことで、もう真っ暗になっちゃいました。
本当は最高の夕暮れの中で最高の景色でこの曲を聴いてほしかったんですけど、今点いているステージの照明が俺たちの夕陽です。”
この曲とは、もちろん「From Dusk Till Dawn」。
“暮れてく 夕映えに 背中を押されて 歩き出す 影が示す方へ”という歌詞が夕暮れ時の琵琶湖を描写しているかのように優しい空気に包まれる。
さらに「傷だらけで 痣にも似た 数えきれない ほころびがあってそれでもまた 光差す場所を 目指して」という歌詞も、この日のa.b.s.を体現してるようで、大型ビジョンに映し出されたメンバーを見つめる観客に感動が押し寄せる。
スケール感のあるサビは、否が応でも高揚感を高めていく。
”本当に………サイコーーーーー!abingdon boys school最後の歌です!”
いよいよライブは佳境に。ラストを飾るのは「キミノウタ」。a.b.s.のライブではおなじみのクライマックスソングだ。
西川の歌い出しから綺麗なメロディーで進行していくハズだが、「湿ったアスファルト 錆びた雨の臭いに 吸い込まれていきそうで」と歌った以降、西川がステージ中央で顔を俯けたまま歌えずにいる。
表情は見えないが、明らかに涙を流している様子だ。
これまで積み上げてきた記念すべきイナズマ10回目のステージにa.b.s.として立てたこと。
このメンバーとまた一緒に音楽ができたことなど、様々な感情が涙となり、歌えずにいる。
すると空白となった西川のボーカルパートを埋めるようにオーディエンスがカバー。
愛に彩られた楽曲が、濃厚な愛へと深みを増し、この日を待ち望んでいたファンとの絆の深さを痛いほど感じるワンシーンであった。
6年の歳月を経て辿り着いたイナズマのステージ。
まったく色褪せない演奏は、心をざわつかせるほど熱くし、鮮やかに輝くa.b.s.の歴史の片鱗を見せつけた。
これまでの記憶が頭に焼き付いて離れないのと同時に、「またこの6人で奏でる音が聴きたい」という想いが胸の内から込み上げ、今後の活動に期待が膨らむステージだった。
【SET LIST】
1. STRENGTH.
2. HOWLING
3. JAP
4. LOST REASON
5. From Dusk Till Dawn
6. キミノウタ